はじめに
医療安全や医療機器に関するコストは高くつくというイメージを多くの医療機関では持たれているかと思います。
一般的に臨床工学技士が不在で、機器の修理は取引先のディーラーさんを通してメーカーさんへ依頼しているという病院(多くの中手規模病院がこれに当たるはずです)をモデルに、臨床工学技士が在籍した場合と比較して分析していきたいと思います。
尚、放射線科にある撮影機器や、CT,MRIなどの大型機器以外のME機器に絞って分析します。
実態
・メーカーと保守契約を結ぶのは人工呼吸器・麻酔器に留めて他の機器は点検ではメーカーに出さない。(実質的に日常的な点検は行っていない)
・臨床工学技士が居た場合は人工呼吸器・麻酔器はメーカーとの保守契約を結び実施し、他の機器の日常点検を実施する。この場合安価な測定装置(以下、治具という)があれば定量的な(メーカーレベルに匹敵する)定期点検が可能となるが、治具自体は高価なものが多いためほとんどの場合所有していないことが多い。
コスト・シミュレーション(150床 急性期病院:透析無し・循環器心外無し・脳外科無し・HCU無し)
臨床工学技士1人当たりの人件費(年) ¥4,000,000ー①
維持費(メーカースポット点検 年1回 概算)
人工呼吸器 ¥120,000×2=¥240,000
麻 酔 器 ¥100,000×3=¥300,000
電気メス ¥50,000 ×3=¥150,000
生体情報モニタ ¥100,000×7=¥700,000
輸液ポンプ ¥10,000×20=¥200,000
シリンジポンプ ¥10,000×15=¥150,000
合計 ¥1,740,000ー②
①+②=5,740,000(臨床工学技士常勤で定期点検を全てメーカーに依頼した場合)
実際はここまでコストは掛けられないので、メーカー保守は人工呼吸器と麻酔器に絞り結果
臨床工学技士人件費 ¥4,000,000-①
維持費
人工呼吸器 ¥240,000
麻 酔 器 ¥300,000
小計 ¥540,000-②
①+② 合 計 ¥4,540,000
このようになり、実際は臨床工学技士を雇用できるような状態ではなく、メーカーとの保守契約も結んでいないことが殆どで専門家不在の状況で、専門外の看護師が形ばかりの日常点検を行てはいるが、点検記録などが存在していなく保健所の立入検査で指摘されてしまう状況が生まれてしまいます。
臨床工学技士が在籍した場合機器管理の精度は格段に上昇し安心安全が担保されます。
この場合治具に掛かるコストは以下の通りです。(概算の税込納入価:安価の物を設定)
人工呼吸器・麻酔器用治具 ガス流量テスター ¥1,200,000
電気メス用治具 電気メステスター ¥1,300,000
除細動器用治具 エネルギーチェッカー ¥ 300,000
輸液・シリンジポンプ用治具 ポンプチェッカー ¥ 500,000
電気安全性試験用治具 電気安全解析装置 ¥ 800,000
合 計 ¥4,100,000
これだけのコストを普通の中小規模病院で掛けることは不可能です。よって、臨床工学技士が在籍していた場合でも必要最低限で安価な治具だけを購入し、生命維持に係る部分だけをメーカー保守契約をするということになります。
その場合のコストは
臨床工学技士人件費 ¥4,000,000
維持費(メーカースポット点検 年1回)
人工呼吸器 ¥120,000×2=¥ 240,000
麻 酔 器 ¥100,000×3=¥ 300,000
治具購入費
除細動器用治具 エネルギーチェッカー ¥ 300,000
輸液・シリンジポンプ用治具 ポンプチェッカー ¥ 500,000
合 計 ¥5,340,000
やはりコストが大きく掛かります。透析や循環器、脳外科があればまだましですが、無ければここまでコストを掛けようと思う病院は皆無だと思います。よって、医療機器の安全保守管理にはお金が掛けられず、リスクを取って故障したら修理をする=メンテナンスという図式が出来上がることになります。
また、臨床工学技士在籍の病院でも臨床業務に手を取られ機器管理が片手間になってしまうことも有ります。だからと言って安易に増員することもできないのが実態です。
外注という選択肢(外部委託はコスト抑制なるのか?)
医療御機器管理の外部委託に関してみずほ情報総研より以下の様なデータが出ています。
みずほ情報総研のデータはこちら
これに(P26,27)よると、全体的に委託率は80%以上とかなり高いことが分かります。また、サービス内容は業者によって
かなりまちまちの様です。委託金額の価格水準は100床当り¥1,686,000となっています。
サービス内容が利用施設にどれだけマッチしているかにもよると思いますが、それらもひっくるめての水準は上記というデータが出ています。
この金額を見ると外部委託が如何に安価であるかが分かります。臨床工学技士の人件費の42%です。
また、点検に関しては治具を所有している業者が殆どで、治具購入のコストは丸々掛からずメーカーレベルに近い定期点検が可能となっています。どうしてもメーカーとの保守契約を結んでおいた方が良い機器を除いた機器に関しては十分です。
また、臨床工学技士在籍でも臨床業務に手を取られ機器管理が片手間になりがちだが、増員が出来ない場合にはこれを安価に補う外部委託サービスはかなりのコスト抑制につながることは明白です。
全くコストを掛けたくないのであれば、何もしないことです。しかし、この場合医療安全上のリスクは上がっていくこととそれに伴って現場の従事者の不安は払しょくできす、質の高い医療を提供しているとは言い難い状況を招きやすくなり、保健所からも指摘を受けることになるでしょう(もっとも保健所の立入検査の厳しさは自治体によってかなり差があることも事実ですが)
質の高い医療をコストを抑えて実現していくには医療機器管理の外注化は大きく貢献します。委託率の高さがこれを証明しているのではないでしょうか。
弊社の価格水準はみずほ情報総研の水準より下回る価格設定をしています。
病院様の状況によって柔軟に対応しておりますのでお気軽にご相談ください