「急に医療機器が動かなくなる」をテーマに実際の事例を織り込みながら考察していこうの続きです。
急に医療機器が動かなくなったら困りますよね。特にこの原因が故障だったら、現場では打つ手が無くなります。メーカーから代替機を借りて修理に出すことくらいしかできません。
では、このようなケースは医療機器にまつわるトラブルは何%程なのかというと実は1割程度なんです。
前回まで9割は使い方の拙さや取り扱いの拙さによって誘発された故障というお話をしてきました。では、これ以外の故障には何が有るでしょうか?
その原因は以下の通りです
1, 経年劣化により起こった金属疲労による劣化
2, 内部の部品に溜まった汚れ
3, 機械部品に使われているグリスなどのオイルの劣化や減少
4, 定期交換部品の未交換
5, メーカー側のリコールや自主回収事例
等です。
5の「メーカー側のリコールや自主回収事例」はともかくとして、これらは新規に導入してから、経年劣化を迎える5年、5年以降に発生しやすくなります。それ故きちんとした定期点検を実施していればある程度予測がついてきます。
機器によってはメーカーが推奨する保守契約に沿った定期点検と整備を行っていればこれらのトラブルはかなり少なくできます。
しかしながらこれらの故障が発生する率は10%程ですので、生命維持装置や治療器である人工呼吸器や麻酔器、電気メスや、保育器などはメーカーとの保守契約を結ぶのは有りだと思います。
しかしながら、これらの料金は1台当たり10万円前後と高額なため、契約できる機器はおのずと限られてきます。
それでは、これらの機器も含め治療器などは測定器を用いた定期点検を実施し定量的に現在の対象機器の安全性と性能が保たれているかを確認し、使用年月からスポット的にメーカーへ点検整備を依頼しておけば突然使えなくなるという現象はかなり抑えられます。
このメーカーへの依頼は数年ごとにスポットで依頼すればいいのでコストもさほどかかりません。
但し、この管理をしっかりやっておかなければならず、医療機器安全管理責任者の方の重要な管理業務となります。
機器の分解はメーカーからの認定を得た者でなければ法的に実施することができません。臨床工学技士在籍病院ではシリンジポンプなどはメーカーのメンテナンス講習会を臨床工学技士に受けさせて認定を得ることでコストを下げていますが、臨床工学技士不在病院では定量的定期点検とその管理を実施してスポット的にメーカーに依頼することが得策と思います。
因みにメーカーメンテナンス講習会は実施しているメーカーと実施していないメーカーが有り、実施しても機種ごとに受講する必要があります。
勿論講習会は有料ですので、全てのメーカーの全ての機種(新旧ふまえて)をカバーするとなると経済的にも時間的にもキリが無く不可能です。
管理と計画が極めて大切です。
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